多機能フィルターの「菌根菌」で、
噴火により失われた緑を再生。
課題
噴火などで山林が切り取られた斜面では、やがて岩石が露出し、植物は自生しない。「表土1ミリが出来るのに50年かかる」ともいわれ、自然な回復を期待することができない。雲仙普賢岳を昔の美しい山に再生させる壮大なプロジェクトが始まった。
解決法
山口大学の丸本教授は、こうした荒廃地に植物や種や肥料を織り込んだ多機能フィルターのシートで覆う工法で、緑化を成功させている。 中でも効果を発揮しているのが、多機能フィルターの「菌根菌」。植物の根にはり付き、菌糸が網の目状に広がる。土壌からわずかな水分や養分を集め、植物と共生を果たす。 試験を重ね、土石流で荒廃していた普賢岳の火砕流跡地の一部で緑化事業に採用された。 植物の種や肥料、菌根菌などを入れた約30センチ四方の「種バッグ」で、95年に土石流に埋もれた普賢岳北東の垂木台地に、翌年は水無川上流の赤松谷に、ヘリコプターで投下。 |
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種や肥料、菌根菌の入った「種バッグ」が採用された。
効果・結果
種バッグは植生の活着が良くなり、根張りに優れ、菌根菌と植物との共生を促すことから、散布された種バッグを基地に、植物は順調に成長。生育速度は通常の1.5倍ほどで、5年後には木々が3メートルほどに成長した。
1999年から2003年の調査で、種バッグに入れた菌根菌と生育地の菌根菌とのDNAが一致し、緑化の効果が証明された。
こうして、樹林化を目的とした新しい乾式工法として、菌根菌が初めて緑化技術として確立された。